「中途採用担当者だが、面接官としての教育研修を受けたことはない…」、「面接中、応募者へ型通りの質問はするが、深掘りできない」、「我流のため、聞き漏れがなかったか不安になる」。
そんな人事担当者からの不安や悩みに答える特集「面接質問集」。過去、ご好評をいただいた本記事をさらに拡充しました。中途採用の成否を握る面接について、さらに深い学びになれば幸いです。ぜひご参考ください。
10人中7人の求職者が、「面接」で入社意欲を増減させた経験あり
過去、求職者へ聞いたアンケートでは、面接によって「入社をしたくない」と思った経験のある人は79.9%。逆に面接によって「入社したくなった」と思った経験のある人は67.4%。
大体10人の応募者がいれば7人程度は、面接の内容次第で選考を進めるか辞退をするか決めているということが見て取れます。つまり、面接官の質問や応対などが、採用の成否を大きく握っています。あらためて、面接官の心得やノウハウを点検していきましょう。
面接官の心得は、いかに「応募者の見えにくい特徴」を把握し、見極めるか
面接において、いかに「応募者の見えにくい特徴」を把握し、見極められるか。これが面接官の心得として大事なことです。
上図をご確認ください。応募者の見えやすい特徴と見えにくい特徴を図示しています。氷山のようなモデルですが、波線の上部分が、面接で見えやすい特徴。波線の下部分が面接で見えにくい特徴です。
即戦力を求める中途採用では、面接に当たっての感じの良さや、履歴書・職務経歴書から読み取れる経験・スキルを優先してしまいがちですが、これらはすべて見えやすい特徴の部分。自社での「仕事内容・ポジション」に適合するかという、「スキルマッチ」の部分です。
もちろんスキルマッチは重要ですが、見えにくい部分である「資質・性格・価値観」部分が、「社風や社員の価値観にマッチ」するかを、いかに把握し、見極めるかが重要になります。
面接官の役割は、「見極め」と「魅力づけ」
上図は、面接官の具体的な役割です。ポイントは「見極め」と「魅力づけ」を同時に行なうことです。
面接の見極めについて
採用可否を「見極め」るために、情報を引き出す必要があります。履歴書・職務経歴書から見えやすい特徴であるスキル・経験のファクト(事実)を引き出す質問と、見えにくい特徴である応募者の性格や資質などを引き出す面接質問が必要になります。
面接の魅力づけについて
応募者が貴社を入社先として選ぶための「魅力づけ」も大事な役割です。上記の情報収集によって把握した応募者の資質や性格に対して、自社の情報を正直に話し、入社への動機を形成します。
また、面接を通して、応募者が気づいていなかった自身の魅力や転職動機を、整理し、言葉にして伝えてあげることで、貴社により強い魅力を感じるはずです。
面接のゴールは、お互いに良いプレーができた状態
面接官は、面接によって良い情報が取得でき、合否判定ができる状態になって面接が終了できている状態。一方、応募者も入社か辞退の判定できる状態であり、さらに話したいことや、聞きたいことが良く聞け、「波長の合う、良い会社と出会えた」と考えています。
このまったく逆の状態が、「根ほり葉ほり色々なことを質問されたが、結局何で判断されたのか意図がわからかった」、「面接官から一方的に話をされ、会話にならなかった」という求職者の声。実は採用現場でとても多く、他人事ではないかもしれません。ぜひお互いがゴールに向かえるよう面接を進めましょう。
観察による見極めのポイント
面接官として、応募者の回答した内容だけでなく、表情、態度、声のトーンなどにも注目することが大切です。それぞれの見極めどころや、ポイントがあります。ぜひ、参考に観察してみましょう。
本音を話すための「場作り」に使える質問
面接のゴールは、合否の判定に必要な情報を導き出すことです。そのためにはガチガチに緊張されている状態のほか、リラックスできていない状態ではいけません。まずは応募者の本音を引き出すための「場づくりに使える」質問をご確認ください。
誰でも回答できる「場作り」になる質問です。合否がまったく関係ない、簡単なイエス・ノーの回答だけで会話になります。また、面接のための来社に対して感謝を伝えることや、面接官の自己紹介、面接にあたってのスタンスも説明すると、応募者の緊張感をほぐすことにつながります。
「職務適性」を確認する質問
職務適性を見極めるために、応募者の「具体的な経験」を確認していきます。質問を工夫することにより「過去の事実」や「エピソード」にフォーカスして、より詳細な情報を引き出します。
まず、応募者の簡単な経歴を質問していきます。まだこの段階では、緊張がほぐれていない場合もあり、趣味や出身県など共通の話題や話しやすい質問を用いると、応募者との心の距離が縮まります。ある程度面接の場が暖まってきた時点で、具体的な過去の経験を確認していきます。
職務経歴への質問は、入社後の成果に直結するため、念入りに深掘って質問していきたい項目です。意識すべきことは「事実(ファクト)をしっかりと確認」すること。そして、その事実を生み出したプロセスのエピソードを確認することです。どんな「業務」を担ってきたのか、そこで「どのような成果」を残してきたのか、「環境」・「対象顧客」・「目標」・「工夫」など、事実を確認していきます。
「退職理由」の本音を聞く質問
退職理由を面接で確認するのは、入社後に同じように退職しないか、再現性がないかを見極めるためです。本音が出にくい場面ですが、表層的な情報収集で終わらないよう、会話していきましょう。
応募者は、退職理由に関する質問に対して、必ず回答を用意しています。その回答から更に深く掘り下げていくことが重要です。退職理由を、会社や他人のせいにしている場合や、やりたい仕事がコロコロ変わっている場合は注意が必要でしょう。
「志望動機」「仕事観」を聞く質問
志望動機に関する質問は、応募者の仕事観を探るための材料となります。また、同時に選社基準を聞いておくことで、自社の魅力づけを行なう際の有益な情報になります。
志望動機を確認する際は、何故自社に応募したのかという質問はもちろんですが、自社で働くことで何を期待しているのか、将来的にどのようなキャリアを積みたいのか、他にどんな企業を受けているのかを確認します。
その結果、必ずしも自社で実現できるとは言えないことを期待しているというギャップが発覚することも。ここをしっかり確認しなかったことで、入社後のミスマッチや早期退職の原因になる可能性もあります。
「人間性」「性格」を見極めるための質問
仕事観にも通じますが、見えにくい特徴である「人間性」や「性格」を把握するための質問です。スキルマッチ重視の面接の場合、見慣れない質問かもしれませんが、履歴書や職務経歴書には現れない部分について見極めに有効です。ご活用ください。
「魅力づけ」の質問
次いで、「魅力付け」のための質問です。応募者自身に自社のことを語らせることで、本人の納得度が高まると同時に覚悟や決意を固める手助けをします。また、あえて率直に応募者への懸念点を伝えるという質問も。結果的に「マイナス面も理解したうえで採用したいと言ってくれている」という応募者の理解と安心感につながります。
「その他」の質問
面接のゴールは、企業側は合否の判断ができる充分な情報を得たこと。一方、応募者は企業への入社判断ができる情報を得られたこと、ベストプレーができたことです。応募者が不完全燃焼にならないよう、最後に以下の質問をするとよいでしょう。
応募者にとっては、逆質問のチャンスであり、最後のアピールの部分。なかなか自分からは切り出しにくい逆質問も、誘導してあげましょう。逆質問を促した際、応募者から質問がまったく出なかった場合は志望度が低い可能性があります。
まとめ
面接官が知っておくべき、面接の心得、ゴール、役割に加え、観察のポイントや質問を増加させた「面接質問集[完全版]」はいかがだったでしょうか。実際に使用してみることで、面接内容がより深くなり、応募者の本質に迫ることができるようになるはずです。ぜひご参考いただき、より良い面接を実践してください。